ころころ高〜炉

こんにちは。古書城田女将です。今日は雲のうえ3号っぽいお話を。


11月4,5,6日に開催された起業祭に行ってきました。
このお祭りは八幡製鐵所の起業を祝ったのが始まり。毎年6〜70万人の人出があるそうです。八幡の大谷球場周辺には出店が延々と立ち並び、ステージではダンスが披露されたりと、見どころはたくさんありますが、私の中でのメインイベントは


製鐵所の高炉見学!!


社会科見学などを除いて一般人が製鐵所を見学できるのは年に一度、この時だけ。しかも今年は熱延工場に加え、夢だった高炉の見学会も実施されるというので、早速行ってきました。



戸畑駅から歩いて10分ほど歩いたところにある八幡製鐵所飛旗門。(トビハタ、というのがトバタの語源という説も。)


この門から先は製鉄技術の中枢。写真撮影は禁止されているので、以降はイラストでご説明をば。


長蛇の列に並び、辿りついたのはバスターミナル。え?工場にバス??敷地の広大さ故、従業員の方々がそれぞれの職場の工場に行く為に、バスが運行されているのです!その路線図は街のそれと変わりないくらい。


満員御礼の高炉行きバスに乗って出発。道中、係の方が製鉄所についてガイドしてくれました。
敷地面積は福岡ドーム140個分。ブリキからレール、鉄板鉄管などなど、造っている製品の種類が多いのが特徴なのだそう。ブリキのおもちゃも電車も、ここからはじまるんだなぁ。
車窓からは数々の工場や、パイプラインが併走するのが見えます。大きなパイプは人の身長の倍はあろうかという太さ。
幾度か踏み切りを渡る為に一旦停止。ここには輸送用の汽車も走っているのです。くろがね線、昔は鉱滓コウサイ線と呼んでいました。
すると、向うからどっしりのっしりと機関車がやってきました。



機関車の後ろには不思議な形の貨車。トーピードカーといって、中には出来たてアツアツの熔けた鉄が入っています。線路を走って敷地内の別の工場に運ばれていくのです。てっぺんの口からユラユラと陽炎を立ちのぼらせながら、通り過ぎていきました。


バスに乗って数分、正面に高炉が見えてきました。高炉前到着。
褐色の100mを越す立ち姿は圧巻。威厳のような、畏怖の念というか、重厚さがあります。高炉の足元にはトンネルの列。トンネルにはどれもトーピードカーが入っていて、そのうち一台には真っ赤な綱のようにして溶けた鉄が注がれていました。


いよいよ高炉工場内へ。
入ってみると天井は遙か高く、時折、無線の不透明な声が空間いっぱいに響いていました。その空間の中心に、高炉。ごつごつした管が無数に絡まって、まるで屋久杉のよう。床はシックなレンガ張り。デザインではなく、高温や火の粉に耐えるためのものでしょう。
ちょうど出銑…溶けた鉄を取り出していた最中だったらしく、取り出し口の辺りが煌々と赤く照らされていました。なんだかこちらまで熱さが伝わってきそう。その周りで作業するのは3人の職員さん。



そのうち一人は銀色の宇宙服、ではなく耐火服を着ていました。細い鉄の棒で取り出し口やレンガ床に開いた穴を突くと、火花がスパーク!!それに臆することなく黙々と作業は続きます。これだけ大きな高炉の火の番人が3人とは、思ったより少人数で驚きました。それぞれの眼に、職人の輝きが宿ってるんだろうなぁ。


高炉の姿は巨木のようでもあり、無数の血管が蠢く心臓のようでもあり……鉄が自在に形を変えるように、その印象も見る人によって形を変えるのだと思います。次に見るときはどんな形に見えるかなぁ。(来年も高炉の見学会を開いてほしいところです…)(古書城田女将)