北九州帰郷記

はじめまして、北九州市門司区出身、現在は京都市在住の中村と申します。
大学から京都で、はや11年。


今は、古書ダンデライオンというオンライン古本屋を営みつつ、それぞれ3人共同で、町家古本はんのきという古本屋と、トリペル(tripel)という古本・マンガカフェを展開しています。


北九州に帰るのは、年に1、2度ほど。
北九州という街も広く、まだまだ知らないところだらけで、帰るたびに、知人・友人に色んなところを教えてもらっています。「雲のうえ」も地元の色んな顔を教えてくれる、大切なものです。


先日、12月のはじめ、3日間ほど、博多・北九州に帰ってました。
いつも帰るたびに遊んでくださる、古本屋の先輩、古書城田さんに、今回も、お初な北九州のスポットを連れまわしてもらいました。古書城田さんは、今回の「雲のうえ」にも、インタビュー記事が掲載されています。




美味しい珈琲が飲みたい、という私の願いを聞いて、城田さんのお店から車で出発。と、曇り空が明るくなって、虹が。しかも、二重の大きな虹。良いスタート。





夕暮の若戸大橋を渡り、若松渡場へ。この前にある、上野(海運)ビルへ。初めて来ましたが、良い具合に古びたレトロ建築。





木造のギシギシいう階段、広い吹き抜け、石造りの壁や床。昔の小学校や、子供の頃に入った、昔の門司区役所とか、こんな感じだったなぁ、と思いつつ、3Fへ。この日は、イベントが行われていたそうで、各部屋では、アクセサリーや雑貨の販売もありました。




306号室の「Asa Cafe」さん。窓の下には若松港が。水の流れをボケッと見ながら、美味しい珈琲をいただきました。居心地の良いソファで、いつまでも居られる雰囲気でした。京都は、海がないので(日本海まで行けばある)、たまに帰ると、何はともあれ海が見たくなります。


「そういえば、今日はえびす祭が・・・」と城田さん。すぐ近くの若松恵比寿神社へ。
京都にも、五花街のひとつである宮川町の中に恵比寿神社があり、年明けの「十日ゑびす」は、大変な賑わいで、私も、学生時代に働いていたお店の方々とお参りに行ったことがありました。







若松恵比寿神社は、なんと若戸大橋の下にある神社。この日は、若松えびす祭(秋季)が開かれてました。大きな橋脚の下の参道には屋台がずらり。地元・福岡ならではの梅が枝餅もあり、嬉しくなりました。地元に帰った実感。かつてB−1グルメで優勝したというシロコロホルモンの屋台なんてのもありました。


城田さんと2人で、家内安全・商売繁盛を祈願し、名物の、よもぎ入えびす餅も。縁起物の熊手も買いました。帰って調べると、Wikiの記事があり、「若松」の地名の由来も分かり、今回も楽しみとともに勉強に。まだまだ知らんことだらけです。




また、今回の帰郷では、地元に関するものとして、古書城田さんの店内にて展開中の「山福康政展」から山福康政さんの『ふろく』(1982年、草風館)を、博多・けやき通りの新刊書店ブックスキューブリックさんで『サークル誌の時代 労働者の文学運動1950−60年代福岡』を求めました。


前者は、山福印刷を興した山福さんが、戦前戦後の思い出や出来事などを、絵と文章と俳句で一枚ずつ書いた「落書き」を一冊にまとめたもの、の新装版。そもそもは、大病後、近しい方々に配るために、小部数だけ自家製出版されたものだそうで、それが話題になり、増刷、新装出版されたということ。「雲のうえ」第3号に、山福印刷さんの取材記事が載っていて、この本のことも言及されていました。のびのびとしていて、味のある、でも時折ハッとするような絵、直截で、気持ちの良い文章、軽く、でも深い、自由律の俳句。山福さんの歩んできた人生のひとこまひとこまが、面白く、悲しく、軽く、重く描かれています。今回の大きなお土産。


後者は、50年代より、労働者の組合活動や演劇、美術、文学のサークル運動から生れた「サークル誌」を一堂に掲載・解説した図録冊子です。福岡文学館の企画展示に合わせて作成されたもので、当時の労働者の文化活動や政治活動の生き生きとしたものや、版画の表紙やガリ版の文字など、手作りの本の力強さも伺えます。筑豊記録文学者であった上野英信さんや、「サークル村」の谷川雁さん、森崎和江さんのことも掲載されています。


地元・北九州を出てから思ったことは、意外と、地元に関して何も知らんなぁ、ということ。もちろん広い街・都市なので、いっぺんに、とはいきませんが、これからもぼちぼちと、帰る度に、あちこち行ったり、知ったりすることができれば、と思います。


(中村)