街の朝

明け方に目が覚めてしまい、もう一度眠ろうとしても目がさえて、結局、本格的に起きてしまった。
そんな朝、私には決まって出かけるお店があります。
清潔な空気を吸って、自転車のペダルをエイヤッと踏み込んで、早朝の小倉の街に出ることにしましょう。




朝6時。


小倉のマダム御用達のデパートといえばここです、井筒屋。


賑わう日中の姿はこのとおり。


夜明けの井筒屋前はというと…



「IZUTUYA」のアルファベットが動物やピエロに大変身!
なんて可愛いシャッターでしょう。
お店が閉まっている時にしか出会えないサーカスです。





商店街も静か。




しかし、スーパー丸和は休むことなく営業中。


24時間営業スーパーは、この丸和が日本初なのだそうです。
いつでも頼りになる存在です。





夜明けの花を愛でにきたのか、市場が開くまで門番か。




あ、早くしないと目指すお店に間に合わない…!
びゅびゅんとモノレール三萩野駅まで自転車を走らせます。




6時半、お目当てのお店に到着。

揚げパンの虎屋。ここを目指していたのです。雲のうえの5号に登場。


この時間で、すでに順番を待つお客さんの姿が。
お店の中はいい匂いと美味しそうな音でいっぱいです。


カウンターの向こうでは、休む暇なくパン生地ををキュキュッと丸める人、揚げる人の姿。
皆さんご家族なのか、見事なチームワーク。


壁には「カレーパン、アンドーナツ、リングドーナツ 各40円」とマジックで手書きの値段表。
このお値段なのでいつも10個以上買い込んでしまいます。


順番を待つ間にも、出勤途中の男性や常連と思しき女性など次々やってきて、列が途絶えることはありません。


「カレーパンが売り切れで、アンとリングドーナツのみですが…」とのこと。
カレーが一番人気ということかしら?また買いに来なくては。
それぞれ10個ずつ購入。男性の店員さんがきびきびと手際よくビニルに包んでくれました。


帰り道、やっぱりガマンできなくて信号待ちでつまみ食い。
ドーナツは出来立てアツアツ。
ほおばると、カリッとして香ばしい外側と、もっちり伸びのある中の食感がたまりません。



それにこのドーナツは出来立てはもちろん、冷めてもしっとりとして美味しいのです。
これだから早朝の虎屋は病みつきになってしまうのです。




再び旦過市場



まだ暗い市場の店頭で、黙々と麺を打つ男性に出会いました。


お昼時にはひっきりなしにお客さんが詰めかける「旦過うどん」ですが、その美味しさはこの時間から作り出されていたのですね。
力強い作業の次は、とんとんとんと軽快な調子で麺を切っていきます。
一辺倒の力加減では務まらない、奥の深さを感じました。




斜向かいの「村上菓子店」にも早くから明かりが灯ります。

懐かしいガラスケースの中には、コケシ型のクッキー、げんこつあられ、ボーロ。
ゼリーは包み紙にくるまれた、キャンディー型の方のゼリー。
どれも一度はおばあちゃんやお母さんからもらったことのあるお菓子ではないでしょうか?


「昔は朝早くから市場が開きよったでしょ?長いことそれに合わせて店開けよったけ、今でもこの時間に開けるんよ。
生活のサイクルができてしまっとるんよね。」
と笑って話す店主の女性。お店を引き継いで40年になるといいます。


大切な「あの頃」に帰らせてくれるお菓子がきちんと用意されている。
こんなお店のある小倉の街の人は、幸せ者なんじゃないかと思いました。




鮮魚店では男性数人が、次々運び込まれる魚をあっという間に捌いていました。


仕事に真剣な男たち、シビレました。こちらも身が引きしまる思いでした。




いつも同じように見える街も、時間を変えるだけで全く違う表情を見せてくれます。
その表情を見に、朝の街へと出てみませんか?(城田女将)